2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

無題7

悲しい日には 悲しい音楽と 悲しい文学を

無題6

ただの言葉遊びは 詩ではない ならば詩とは 言葉の何なのか わからない僕は24歳になったよ 読書がわかりかけてきたよ 芸術が 文学が 哲学が 知性がでも詩は書けないよ

無題5

ここではないどこか どこかではないここ いたちごっこは続く……旅がしたいという意志を たたえたまま僕は永遠のごとく寝ころぶ ワンルームの部屋 LEDが爆ぜる 競馬中継の音 自意識の染みついた布団に 枕 頭をうずめて朝が語りかける 昼が語りかける 夜が拒…

無題4

感性を 捨て置き 知性を 捨て置き からっぽ空疎と 空虚は 似て非なるもの

無題3

経験を経験し 経験の経験を経験し 経験の経験の経験を経験し……そんな想念が 頭の中をかけめぐり 僕は僕が育った地方都市の 真只中西脇順三郎を読んだ 高村光太郎を読んだ だからどうした 僕は迷い子 二四歳の迷い子

無題2

幾重にも 折り重なった 商店街その商店街の群れが 死にかけで ざわざわ ざわざわ 死者としての 商店街の声をここは確かに 僕の育った都市 交差点と 公会堂と 高島屋だけが ぎらぎら ちらちら ゆらゆらしがない地方都市の交差点

無題

からっぽの 商店街死んだ本屋 死にかけの喫茶店 生まれたての古着屋踏みしめる 商店街の コンクリート流れるポップスも しなびて なしのつぶてここが僕の育った「都市」

無題6

言葉と 風景が 爆ぜる白い山並み ぼくの生きた町 そしてぼくがもう生きない町 死んだ午後のバス通り ロータリーには 老人が立ちすくみ鬼のすみかは何処へやら 鬼も大人ももうおらず 社会がなく 世間も成り立たず 白い稜線だけが 空っぽの駅前広場を見守って…

無題5

ここがぼくの生きる街 そこはぼくが捨てた町 そこはぼくが生きた町 ここはぼくが果てる街

無題4

僕の生まれた町は 鬼のすみか 民度の低い町 青い顔をした 大人たちが 老人たちが ゆらゆら駅前に 亡霊が闊歩し まるで猫町 透明な鬼の群れが 渡り歩く駅前道路その駅前ロータリーには 音楽すら響かずに 小学生と 中学生だけが ぶらぶら しどけない空 しどけ…

断章

請求書が爆ぜる

無題3

もうすぐ もうすぐトルストイが トルストイがここは文京地区 老いた人のるつぼ そこを学徒が横切り 文の都 文の都窓際に差し込む ロシア文学 それが夕刻の読書

無題2

ここは文の都 とこしえの収穫祭 とこしえの収穫祭が 春を呼び 秋を呼び 学問と 言葉に 溺れた 天使

無題

銀杏並木の通り 踏みしめ 踏みしめ ぎっしり ぎっしり多幸感が 多幸感が

産業都市 問い と 応え

0灼熱の産業都市が ぎらぎら 物思いに耽り 公園を歩いていた 彼方に 灼熱の産業都市蝉の鼓笛隊が 周囲を埋め尽くして 構わず突き進むも まとわりついてくる蝉――学問に、飽いたんでしょう。 蝉の一匹が話しかけ、 ――ああ、飽いたよ。 ――あなたも鼓笛隊に入り…

続・無題

うずたかく積まれていた請求書の山 崩壊した請求書の山 それを返済できる能力とて わたしには存在しない生きるのではなく生かされている 助け合うのではなく あちらから助けられている こちらからは手をのばさない むなしい穀潰しテレビ画面に映った 『トム…

無題

うずたかく積まれた 請求書の山が 負債が崩れるもうだめだ 生きるのではなく 完璧に生かされている

田園都市と若くない僕と

1田園都市を歩いていた 二十四で、 親不孝者で、 人付き合いが苦手で、 そのうえ女を知らなかった田園が果てしなく続いていた 田園の螺旋階段が僕に迫ってくる 僕はそれを右手で払いのける ――怖いのか ――違う、鬱陶しいんだ 怖いのと鬱陶しいのとは違う田園…

無題3

おのれを許せ 他者を許せ まわりを許せ 受け身になれ人は生かされていく 生きず生かされていく 人は宇宙、 宇宙は人だ すべてをこの身に受けとめ やがてひとひらの星となれ

無題2

言葉が また産み落とされていく言葉は文章となり 人におとしめられ 地に堕ちる論理の破綻 言葉遣いの破綻 破綻の破綻しかしその地に堕ちた言葉は ふたたび 百年後 二百年後 はい上がる

無題

詩とは 全体的なもので詩は全体的で 生を包み込む あなたが書いた詩の言葉が 詩の世界に許容されて どんな言語の間違いだって しだいに許されていく人は許されていく 詩で許されていく