2012-11-22から1日間の記事一覧

無題8

温泉街で 似合わぬ アップル・ティーの盃を かかげ 逗留は五日め 自分の枠順はどこか 定めようとしてただ キルケゴールのみ携えて しかも中央公論「世界の名著」 それを一日につき 三頁から四頁ずつだけ ちびちびと読んでいく 名も知らぬ鳥が飛んでいくメモ…

無題7

賭博が 僕を人でなしにする しかし 賭けは続いていく掃き溜めの競馬場 怒号のるつぼ 僕は我を忘れ ただ駿馬を追いかける

無題6

僕は書き続ける 僕は生き続ける 僕は迷い続ける 僕は歩き続ける 僕は与え続け やがてひとひらの星となる

無題5

僕には風景がない 文化都市 田園都市 技術都市 が 素通りしていく僕は詩論に惑い ただ妄想枠の「少女」を思い浮かべ とこしえの描写を待望する

無題4

部屋 僕はさながら囚人 日課として 詩を書き続けるLEDは爆ぜ 換気扇が単調な音を回転させ カーテンは主張せず 何の意味も為さなくなった本が 床に散らかっているいまだ 歴史性も 文学性も 思想性も 獲得できずに

無題3

文化都市を歩く 学園のたわわな風景 ぎらぎらとした緑の豊穣 木枯らしは霜月昼下がり 夕刻は迫り たわわな学園情景の少女と少年だけが 世の中を闊歩する そんな文化都市僕は周縁からも弾き飛ばされ ただ賭博に身をやつす 文化都市から見れば 単なる咎人

無題2

描写とは 打ち付けること スタンプで 描写をタブラ・ラサに打ち付けていくそれは記号で 描写は記号の舞い 記号の遊戯 言葉は記号 記号は言葉描写とは 暴力に似ている

無題

朝もやの中 僕は社会性の奴隷 とこしえの平凡 妄想すら立ち消えやがて昼が射し込み 僕は社会性の掃き溜め とこしえの平坦 イメージを失いやがて夜がほの見え 僕は社会性の端くれ とこしえの凡庸 想像は闇の中